コトー Blog & Vlog

東洋医学のこと、鍼灸治療のこと、パーソナルトレーニングのこと、日々の暮らしのこと…。カテゴリー別に書き連ねています…。ちょこっと、動画も始めました…。

【動画で見る!ツボの取り方】指や手首の痛み、腱鞘炎に働きかけるツボ『大陵 だいりょう』

こちらは右腕の肘から指先までのイラスト。手のひらが上を向いている。

指を動かすための筋肉はたくさんある。『深指屈筋 しんし・くっきん』はその中の1つ。肘下から、親指以外の4本の指の、先端の骨に付く。この筋肉が縮まると、人差し指から小指までの先端の骨が引っ張られ、4本の指が曲がる。手首付近から指先までは『腱 けん』になっている。

 

ふくらはぎの筋肉 (下腿三頭筋 かたい・さんとうきん)が足首付近で『アキレス腱』になり、踵の骨に付くのと同じ構造。

手首から指先までを拡大すると、こんな感じ…。

 

赤色が筋肉。肌色が腱。緑色が腱鞘(けんしょう)。

 

腱は腱鞘というサヤに包まれている。皮膚の中には筋肉だけでなく、骨・血管・神経・脂肪などいろいろな組織がある。その中で、腱が滑りやすいように腱鞘という筒が付いている。手を酷使すると、腱鞘の炎症により、腱鞘が厚くなり、中を通る腱が滑りにくくなる。これが『腱鞘炎』。

悪化すると、腱鞘の中で腱が引っ掛かり、筋肉全体が動かせなくなる。つまり、指が動かなくなる。これが『ばね指』。

 

もう1度、グロテスクな手のイラストを見てほしい。手首の腱鞘の上には、横手根靭帯(おう・しゅこん・じんたい)がある。屈筋支帯(くっきん・したい)とも言う。

この靭帯や筋肉・腱・血管・神経などを取り除くと…、

 

手の骨格。手のひらの、手首付近(水色斜線)は、小さな骨たち(手根骨 しゅこんこつ)で構成されている。これらの骨たちと、屈筋支帯(=横手根靭帯)でできるトンネルを『手根管 しゅこんかん』と言う。指・手首を曲げる筋肉の腱や神経がこの中を通っている。

腱鞘炎などで腱鞘が厚くなれば、手根管内が狭くなり、その中を通る神経が圧迫され、親指・人差し指・中指のしびれや痛みが出てくる。これが『手根管症候群 しゅこんかん・しょうこうぐん』。

指や手首の痛みが強かったり長引く時には、痛んだ筋肉・腱・腱鞘を使わず、安静第一!しかし、手を酷使して痛める方が多く、その原因である仕事・家事・育児・介護などを辞めるわけにはいかない。

そんな時は、サポーターや装具がおすすめ。固定力が強ければ、関節は動かず、筋肉は休める。しかし、細かな手作業はしづらい。固定力が弱ければ作業はしやすいが、痛んだ筋肉たちはあまり休めない。各々の作業によってサポーターや装具を使い分けると、筋肉への負担が減る。睡眠中も筋肉が緊張している時は、夜間装具もおすすめ。

以前、手の腱鞘炎の特集ブログを組んだことがある。サポーターや装具も画像付きで紹介している。興味のある方は、『再特集~手の腱鞘炎の鍼灸治療とセルフケア①~手の構造』から読んでみてねぇ~。

 

赤いラインは、『手厥陰心包経 て・けついん・しんぽうけい』という経絡。指を曲げる筋肉と同じラインにある。指や手首が痛い時には、この経絡の上にあるツボに鍼やお灸をして、こわばった筋肉を緩める。

手首中央には『大陵 だいりょう』というツボがある。指や手首を動かすと痛い方には、ここへのセルフお灸もおすすめ。

 

これは『台座灸』。底にシールが付いているのでお灸がしやすい。

『大陵』のツボ取り動画を撮ったよ~。ツボの見つけ方にはコツがある。しつこく説明したら、長くなっちゃった…。興味のある方は見てねぇ~。

こんなに長く書いているにもかかわらず、おまけの話。

9月9日は『重陽の節句 ちょうようのせっく』。東洋医学では、世界のあらゆるものを『陽』と『陰』に分けている。数字の奇数は『陽』。偶数は『陰』。9月9日は『陽』が重なっているので、『重陽』と言われる。

季節の変わり目には体調を崩しやすい。『節句』は、その季節の旬の物を味わい、健康を願う日。

重陽の節句の頃になると、様々な花の形をした菊が花屋に並ぶ。キク科の一種『除虫菊』は蚊取り線香の原料になり、菊は薬効がある。

 

これは、お灸で使う『モグサ』。原料は『ヨモギ』。ヨモギもキク科の植物。お灸をしていたら、蚊が網戸の外に出たがっているのを目撃したことがある。

 

9月9日に菊の花を飾り、

 

小さな菊の花を浴槽に浮かべ、重陽の節句を味わったよ~ん。

福岡県福岡市にある女性専門鍼灸&パーソナルトレーニング≪レディース鍼灸ことうプラス≫の女性鍼灸師・理学療法士のコトーでした。

 

特集:五臓六腑と経絡とツボと鍼灸の関係性⑯~手厥陰心包経(て・けついん・しんぽうけい)

前回の特集ブログで紹介した『足少陰腎経 あし・しょういん・じんけい』という経絡(ピンク色)は、体内でたくさんの臓器とつながっていた。『心 しん』(=心臓)につながっていた経絡は、そこから… 

 

『手厥陰心包経 て・けついん・しんぽうけい』という経絡につながる。

体表では、乳頭の外側にあるツボ『天地』に始まり、脇の下から腕前面の中央を下行し、中指の爪の外側(親指側)にあるツボ『中衝 ちゅうしょう』で終わる。

左右対称に経絡はあり、片側だけで9個、左右合わせて18個のツボがのっている。

 

体内の経絡(ピンク色)は、心包(しんぽう)(=心を包む膜)から、上焦(じょうしょう)、中焦(ちゅうしょう)、下焦(げしょう)につながる。

 

この赤い塊は『心』。心を包んでいる膜のことを、東洋医学では『心包』という。数ある臓器の中で『膜付き』なのは、心だけ。

心包の働きは2つ。1つ目は、心の護衛隊となり、心が邪気を受けそうになったら、代わりに邪気を受ける。

2つ目は、心の命令を外に伝える。また、外からの情報を心包がチャックし、選んだ情報だけを心に伝える。

心包と表裏関係(=ペア)にあるのは、『三焦 さんしょう』。三焦は、特定の臓器ではない。気(=エネルギー)と血(けつ)(=栄養分)と津液(しんえき)(=水分)を作り出し、全身に行き渡らせる機能のこと。

 

体幹部の機能を三分割し、横隔膜よりも上の、胸部の機能を上焦といい、心や肺などの機能が含まれる。横隔膜より下で、へそよりも上の機能を中焦といい、脾や胃などの機能が含まれる。へそよりも下の機能を下焦といい、小腸・大腸・腎・膀胱などの機能が含まれる。上焦と中焦と下焦を合わせて三焦という。

『手厥陰心包経』は、体内で『心包』、そして『三焦』とつながっているんだなぁ…。

 

『手厥陰心包経』の上にあるツボの中で、鍼灸治療によく使うのは、『内関 ないかん』。手首よりも少し上にある。自律神経を整えたり、イライラ感・不安感・精神的なストレス・つわりなどに働きかける。

クネクネ道を走行する車や、アップダウンの激しい船・飛行機に乗っていると、コトーは酔ってしまう。そんな時は、『内関』を親指で押回し!『内関』は、乗り物酔いにも働きかける。

もう15年も前のこと。コトーは中国に留学中、『黄山 こうざん』へ山登りに行くことになった。山登りは大好き!それも、中国の5大名山の1つに登れるなんてラッキー!しかし、バスに酔って、ヘロヘロになりそう…。

修行先の鍼灸院の中国医師に相談してみた。すると、漢方薬が練りこまれたシップ剤を手渡され、これを『内関』と『神闕 しんけつ』に貼るように言われた。

 

『神闕』は、おへその中央にあるツボ。黄緑色の矢印。2泊3日の旅行中に剥がれないよう、シップ剤の上から絆創膏を貼った。

 

おかげで、バスに酔うことなく、楽しく貴重な登山が出来た。

 

自律神経の乱れや、イライラ感・不安感・精神的なストレスなどで気持ちが落ち着かない時には、『内関』へのセルフお灸もおすすめ。上の写真のように、『台座灸』を使うとお灸がしやすい。

ツボの取り方はちょっと難しいけれど、コツさえつかめば、手際よく取れるようになる!!!ツボの取り方の動画を載せておくよ~!

福岡県福岡市にある、女性専門鍼灸&パーソナルトレーニングの≪レディース鍼灸ことうプラス≫の女性鍼灸師・理学療法士のコトーでした。

 

特集:五臓六腑と経絡とツボと鍼灸の関係性⑮~足少陰腎経・その2

口から取り込んだ飲食物は消化され、栄養分は吸収され、全身に運ばれる。不要な物は尿と便になり、体外に排出される。

一連の食物代謝にかかわる臓器は、胃・小腸・大腸・腎・膀胱・脾・肺・肝・心(しん)(=心臓)、三焦(さんしょう)。あっ!ここで注意してほしいことが1つ。臓器の働きは、東洋医学と西洋医学で共通することもあれば、東洋医学独自の見方もある。食物代謝で、脾・肺・肝・心・三焦がかかわるのは、東洋医学独自の見解。

三焦は、特定の臓器ではない。『気(=エネルギー)と血(けつ)(=栄養分)と津液(しんえき)(=水分)を作り出し、全身に行き渡らせる』機能全般を指す。ややこしいねぇ…。

『腎が尿を作り、膀胱へ送る』機能は、東洋医学と西洋医学の共通点。前回のブログで紹介した、『腎が精(=精気 せいき)を貯蔵する』機能は、東洋医学独自のもの。

あと、もう1つ、腎の機能で大事なのは、『固摂作用 こせつ・さよう』。腎には『しまいこむ』性質がある。尿や便・血(けつ)、精などが、保管されている場所から漏れ出ないようにする。そして、必要な時に、そこから出す。食物代謝にかかわる臓器1つ1つに目を配り、食物代謝全般を腎はコントロールしている。これも、東洋医学独自の見方。

東洋医学において、腎は生命活動に深くかかわる臓器。そのため、様々な機能が落ちてくる中高年の方の鍼灸治療では、『腎』の状態を常に気にかけている。また、若者であっても、体力や気力、治す力が落ちている時には、鍼灸で、腎の力を底上げする。

 

腎と直接つながっている経絡は、『足少陰腎経 あし・しょういん・じんけい』。足の裏にあるツボ『湧泉 ゆうせん』から始まり、鎖骨の下にあるツボ『兪府 ゆふ』で終わる。経絡は左右対称にあり、片側27個、左右合わせて54個のツボがのっている。

セルフお灸がしやすいのは、足の裏にあるツボ『湧泉』。腎のエネルギーが地下水のように、このツボから湧き出る特徴があり、この名が付いた。冷え・のぼせ・不眠・頭痛・めまいなどの症状に働きかける。エネルギーを補給する作用もあり、疲労回復にもおすすめ。

 

自分でお灸をするなら、台座灸。底にシールがついているから、足の裏へのお灸もしやすい。

 

使っているのは『棒灸』。モグサを固めて和紙でくるみ、先端に火をつけ、『湧泉』から数㎝離して温める。じ~んわり温まり、気持ちがいいよ~。

ツボの取り方にはちょっとしたコツがある。本来のツボの位置よりも少し上にツボを取る人が多いかなぁ…。『湧泉』のツボの取り方動画を載せておくねぇ~。

高温、高湿、豪雨…。今年の夏は厳しい日が続く。しっかりと食べ、しっかりと寝て、それなりに体を動かし、自分でも『腎』のエネルギーを底上げしよう!

福岡県福岡市にある、女性専門鍼灸&パーソナルトレーニング、≪レディース鍼灸ことうプラス≫の女性鍼灸師・理学療法士のコトーでした。

 

特集:五臓六腑と経絡とツボと鍼灸の関係性⑭~足少陰腎経・その1

赤いラインは、『足太陽膀胱経 あし・たいよう・ぼうこうけい』。前回の特集で紹介した経絡。目頭と鼻の間にあるツボ『睛明 せいめい』に始まり、足の小指にあるツボ『至陰 しいん』で終わる。『至陰』からつながる経絡は…。

 

『足少陰腎経 あし・しょういん・じんけい』。足の裏にあるツボ『湧泉 ゆうせん』に始まり、内くるぶしを通り、脚の内側と体幹の前面を上行し、鎖骨の下にあるツボ『兪府 ゆふ』で終わる。この経絡は左右対称にあり、片側27個、左右合わせて54個のツボがのっている。

これは、体の表面を通る通路。体内を通る通路もある。

 

濃いピンク色の線が経絡。

尾てい骨の下から体内に入り、背骨を上行し、腎に入る。腎からは2本に分かれ、1本は下行し、膀胱に入る。もう1本は上行し、肝と横隔膜を貫き、肺に入る。肺からは2本に分かれる。1本は下行し、心に入る。もう1本は上行し、気管を通り、舌で終わる。

この経絡は、たくさんの臓器とつながっている。『足少陰腎経』と、直結している臓器『腎』の重要性が伝わってくるねぇ~~~。

 

背中とお尻のイラスト。左右の腎臓(赤色)は、『一番下の肋骨の高さ』に位置する。そら豆に似た形。成人の腎臓は、重さが100~150g。大きさは、長さ10~11cm。幅4~5cm。厚さ3cmほど。

 

腎臓で作られた尿は尿管を通って膀胱に蓄えられる。栗みたいな形のものが膀胱。骨盤の中にある。

東洋医学から見た『腎』の働きは他にもある。それを説明する前に、紹介したい話がある。

東洋医学のベースには、『精気学説 せいき・がくせつ』という考え方がある。

『精気学説』その1。全てのものは、『精気』(=精)(=エネルギー)でできている。バラバラな精気は『目に見えないもの』だが、集まると『目に見えるもの』が生まれる。

『精気学説』その2。全てのものは、『陰』と『陽』に分けられ、陰と陽が交わることにより、変化が生まれる。

ヒトの出生を、この『精気学説』に照らし合わせると…。男性は『陽』。女性は『陰』。男性(陽)の精と女性(陰)の精が交わり、『新しい精』が生まれる。そして、女性の胎内で、『新しい精』から、ヒトとして必要なもの(骨・臓器・皮膚・筋肉など)が作られる。

やがて、この世に誕生すると、『新しい精』は『先天の精』として、腎に貯蔵される。この時点で、母親からの栄養を受け取れなくなる。自分の口から取り込む飲食物が栄養となり、『後天の精』として腎に貯蔵され、『先天の精』にも栄養を補充する。

腎の働きとして重要なのは、『精(=精気)を貯蔵する』こと。というのも…。腎の中の精気は、体の発育、知能の発達、生殖機能の成熟にかかせない。また、ヒトの生命活動の基本物質であり、一生の健康を左右する。

成長期に、腎の精気が充実していると、伸び伸び、健やかに成長し、女性においては生理が始まり、生殖機能も成熟する。

中年になると、腎の精気は衰え始め、白髪や老眼、体力や生殖能力の低下など、老化現象がちらほら出始める。

中高年でなくても、腎の精気が衰えると、活力がなくなる、体が冷え込む、病気にかかりやすく治りにくい、生殖能力の低下など、老化現象のような症状が生じやすい。

子宮や卵巣など妊娠にかかわる機能のトラブルがないのに、なかなか妊娠できない時には、腎の精気の減弱が考えられる。そんなときは、鍼灸治療で腎に働きかけるだけでなく、生活スタイルを見直すことも大切。

『後天の精』は、自分の口から取り込んだ飲食物で作られる。バランスのとれた食事をとっているか。充分に睡眠はとれているか。適度に体を動かしているか。頭の中が、妊活のことだけに覆われて、ストレスフルになっていないか。

生活スタイルの見直しは奥さんだけでなく、旦那さんにも共通して言えること。男性の精と女性の精が交わって、『新しい精』が生まれるから…。

腎の精気の状態は、『アンチエイジング』にも直結!様々な老化現象や更年期症状が表面化しているコトーは、『今の自分』と『ちょっと先の自分』に見合った生活スタイルに、少しずつ無理せず改変中!腎の精気が衰えるのは避けられないけれど、直滑降ではなく、ゆるやかに下行したらいいなぁ…。それなりに元気で、やりたいことを実現できる中高年でいたい。

おっ、おっ、おっ、おー!いつもの倍くらい書いても、腎の働きが書き終わらない!次回は、この続きねぇ~!

福岡県福岡市にある、女性専門鍼灸&パーソナルトレーニングの≪レディース鍼灸ことうプラス≫の女性鍼灸師・理学療法士のコトーでした。

【動画で見る!ツボの取り方】逆子に働きかけるツボ『至陰 しいん』

現存する、中国最古の医学書の中に、『皇帝内経 こうていだいけい』がある。紀元前4~5世紀頃の春秋戦国時代から、紀元前100年頃の前漢の時代までにまとめられた。多くの医学者の、多くの治療経験がもとになっている。

西洋医学も経験医学であり、東洋医学と西洋医学は共通する点がある。しかし、東洋医学独特の考え方もある。その中に、『陰陽学説』と『五行学説 ごぎょうがくせつ』がある。

『陰陽学説』では、世界中のすべての物を『陰』と『陽』に分けた。そして、『陰と陽のバランス・協調・調和で、世界は成り立っている』と説いた。『陰ー陽』の例を挙げると…。下ー上、内ー外、夜ー昼、冬ー夏、暗ー明、弱ー強。陰と陽はペアになり、相反する性質を持つ。

陰陽学説では、両者のバランスを重要視。それは、『五分と五分』という意味ではない。陰が極まれば陽になる。逆に、陽が極まれば陰となる。極暑(陽)がいつまでも続くわけではなく、やがて弱まって冬(陰)がやってくる。陰と陽は、その程度を変化させながら、バランスをとっている。

次は、『五行学説』の話。この説明が更に難しい。しかし、これも説明しないと本題に入れない。?????と思っても、読み進めてねぇ~。

『五行学説』の『五』は、木・火・土・金(=金属)・水のこと。『五行』とは、5つ物質の特性やイメージのこと。例えば、木や植物は、上や外側に伸びながら成長する。そこから得られる『木』の特性やイメージは、成長、発育、上昇、伸び伸び、ぐんぐん、など。

 

この図は、『五行学説』の中の、『相生関係 そうせい・かんけい』。

『木』が燃えると『火』が起こる。つまり、木は火を生む。木から火への矢印は、それを意味している。

『火』は『木』を灰にして、灰は『土』となる。つまり、火は土を生む。

『土中』から『金属類(鉱物)』が産出される。つまり、土は金を生む。ちょっと、これはこじつけ?

『地層や岩石の割れ目』に『地下水』がある。つまり、金は水を生む。これも無理があるねぇ。

『水』は『木』を成長させる。つまり、水は木を生む。これは理解できる。このとき、『水』は『木』の母であり、『木』は『水』の子である…と、『五行学説』では表現する。

世の中の事象を『五行』の特性にあてはめ、『相生関係』などを説いているのが『五行学説』。古代中国の医学者たちが考え抜いて、あてはめた。

 

例えば、季節を『五行』の『相生関係』にあてはめてみるとこんな感じ。長夏は雨期のこと。深く考えずに、さらっと見てね。

 

五臓六腑の五臓は、こんな図になる。

 

六腑の中の『三焦 さんしょう』(架空の臓器)を取った『五腑』は、こんな図になる。五臓と五腑は、五行ごとにペアになっている。

『木』の特性を持つ、肝(=肝臓)と胆(=胆のう)。

『火』の特性を持つ、心(=心臓)と小腸。

『土』の特性を持つ、脾(=脾臓)と胃。

『金』の特性を持つ、肺と大腸。

『水』の特性を持つ、腎(=腎臓)と膀胱。

 

これは、5つの感情を五行にあてはめている。

怒りすぎると、同じ『木』の特性を持つ、肝や胆に影響を与える。

喜びすぎると、同じ『火』の特性を持つ、心や小腸に影響を与える。

思いすぎると、同じ『土』の特性を持つ、脾や胃に影響を与える。

憂い悲しみすぎると、同じ『金』の特性を持つ、肺や大腸に影響を与える。

恐れ驚きすぎると、同じ『水』の特性を持つ、腎や膀胱に影響を与える。

五行にあてはめられた物象は、同じ特性を持つ物同士の結びつきもある。あー、東洋医学は難しい…。さぁて、やっと本題に入るよぉ!

 

こちらは女性の骨盤の中。膀胱の後ろで、ちょこっとおじぎをしているのが子宮。その両脇に卵巣。子宮の奥にあるのが直腸。

女性生殖器の働きを持つものを、東洋医学では『女子胞 じょしほう』という。

 

ここで腎気(=腎のエネルギー)の登場。女子胞は腎気により成長・成熟し、やがて生理(=月経)が始まり、子どもを産む能力が備わる。受胎すると生理を停め、胎児に栄養を送り育てる。

胎児は子宮の中で、頭を下、お尻を上にして、手足を胸に引き寄せ、丸まった姿勢をとっている。中には、お尻を下、頭を上にした姿勢や、横向きの姿勢の胎児がいる。これが逆子。胎児の頭が下を向いている姿勢だと出産しやすい。反対を向いていると難産になりやすく、帝王切開となることが多い。

 

 

赤いラインは『足太陽膀胱経 あし・たいよう・ぼうこうけい』という経絡。目頭と鼻の間にあるツボ『睛明 せいめい』に始まり、足の小指にあるツボ『至陰 しいん』で終わる。経絡は左右対称にあり、片側だけでも63個のツボがのっている。

『至陰 しいん』は、逆子を治すツボとして超有名!このツボにお灸をして、胎児が頭を下にした姿勢に戻るように働きかける。『至陰』は、逆子の灸として、長く語り継がれ、今も実践されている。

なぜ、足の小指にあるツボが女子胞に働きかけられるのか………。『足太陽膀胱経』は体内で膀胱(と腎)につながっているが、女子胞にはつながっていない。

東洋医学では、『胎児のトラブルは、腎気の影響』と考える。注意してほしいが、安易に、腎臓が悪いとは考えないでね。

 

赤いラインは『足少陰腎経 あし・しょういん・じんけい』という経絡。足の裏から始まり、鎖骨の下で終わる。体内では腎(と膀胱)につながっている。

経絡には気(=エネルギー)と血(けつ)(=栄養分)が流れている。体表だけでなく、体内の腎にも、気と血を送っている。『足少陰腎経』の上にあるツボに鍼やお灸をして、経絡の流れや腎気・腎の働きをアップさせたくなる。しかし、『五行学説』を思い出してほしい。

 

 

腎と膀胱は(水)に属し、ペアだった。

『足少陰腎経』は陰の経絡。『足太陽膀胱経』は陽の経絡。この2つの経絡は、陰と陽のペア。『陰陽学説』を思い出してほしい。陰と陽はバランスが大事だった。

実は、『足太陽膀胱経』の上にあるツボを使って、『足少陰腎経』や腎、腎気を調整することがある。

あと、もう1つ疑問が残る。片側だけでも63個のツボがある『足太陽膀胱経』。なぜ、『至陰』が選ばれた?ここまで長いブログになったら、最後まで説明しちゃうよぉー。

経絡の中を流れる気(=エネルギー)と血(けつ)(=栄養分)に深くかかわるツボたちを、『五兪穴 ごゆけつ』という。井穴(せいけつ)、栄穴(えいけつ)、兪穴(ゆけつ)、経穴(けいけつ)、合穴(ごうけつ)の5つ。各々、特徴がある。

そして、五兪穴は、『五行学説』とリンクしている。『足太陽膀胱経』のように、陽の経絡は、井金穴、栄水穴、兪木穴、経火穴、合土穴となる。

 

『足太陽膀胱経』の36番目のツボ『委中 いちゅう』は、そのツボの特徴から合土穴とされ、土に属する。

54番目のツボ『崑崙 こんろん』は経火穴であり、火に属する。

61番目のツボ『束骨 そくこつ』は兪木穴であり、木に属する。

62番目のツボ『足通谷 あしつうこく』は栄水穴であり、水に属する。

この経絡の最後、63番目のツボ『至陰』は井金穴であり、金に属する。

 

 

『腎』『腎気』は水に属していた。五行の基本を思い出してほしい。矢印を見ると、『金』は『水』の母。

 

金のツボである『至陰』にお灸をして、水である『腎』『腎気』の働きを調整する。

古典の東洋医学を理解するのは難しいが、逆子の灸として『至陰』が語り継がれ、実践されているのだから、古典も大事なんだなぁ…。

子宮の中で胎児が大きくなり、大きく動けなくなる前までにお灸をする。『至陰』のツボ取り動画を撮ったよ。妊娠も出産もとってもデリケート。ご自分で逆子の灸をしてみたい方は、事前に、必ず、担当の産科医に相談してくださいね。

最高に長い上に、難解なブログを最後まで読んでいただき、ありがとさんです。6月から猛暑とは…。皆さん、体調を崩さないように気を付けてください。福岡県福岡市にある、女性専門鍼灸&パーソナルトレーニング≪レディース鍼灸ことうプラス≫の女性鍼灸師・理学療法士のコトーでした。