1年半の留学を終え帰国すると、心が空っぽになった。

留学中のことをすべて思い出したくなかった。

鍼灸の修業のために必死に勉強してきたのに、

なんでこんなにむなしいんだろう…。

自分でもこの気持ちが腑に落ちない。

といってもどうすることもできない。

心の小箱に封印した。

               *

1年半経って、「留学中の日記を書こう!」と思いついた。

凍りついた想い出が溶けるかもしれない…。

現地で撮った写真を見ながら、、ノートに書いていく…。

30話目はこんなふうに書き記している。

               *

『一番うれしかったこと』

鍼灸治療は朝8時半からで、終わるのは13時半。

先生はよく自宅へ昼食に呼んでくれた。

75歳の先生は、バスで5~6停目にある古いマンションに、

奥さんと住んでいた。

バスは市内ならば1元(=15円くらい)でOK。

バス停はマンションの前の大通りにある。

バスの路線は非常に多い。

帰り際、先生は毎回、何回も、聞いてくる。

「1人で帰れるか?」

「〇番あるいは〇番のバスだからね。」

「1元、持ってる?」

ある日、私はたまりかねて言ってしまった。

「私は大人だぁー、子どもじゃなーい!」

それを聞いた先生も奥さんも大笑い!

うけを狙ったわけではないけれど、

白髪がどっと増えるくらい中国語の勉強もしていたので、

中国語で中国人を笑わせることができたのがとてもうれしかった。

               *

留学中はつらいことばかりだった。

このブログで書けるような出来事は0.1%にも満たない。

そんな中、一番うれしかったことが、『人を喜ばせること、笑わせること』。

「そう、私は人の笑顔をみたいから、鍼灸師をしているんだ…」

大爆笑の出来事を思い出したことで、そのことに気づけた。

凍りついた想い出も溶け出した…。

               *

このブログでもちょっと面白いことを書きたい!と思うのは

画面の向こうのあなたをクスッと笑わせたいから…。

えっ?!

面白くない??

まだまだ笑いの修業が足りませんなぁ~。

精進します!