現存する中国医学書の中で、最も古いのが『黄帝内経 こうていだいけい』の『素問 そもん』と『霊枢 れいすう』。五臓六腑や、気(=エネルギー)、血(けつ)(=えいよう)、経絡(けいらく)、ツボのこと。各々の特徴や、病に対しての反応と対応など、びーっしり書かれている。その中で、経絡中の気と血の運ばれ方を、水の流れ方に例えた箇所がある。

湧水が湧き出て、小さく浅い小川となり、やがて大きく深い河川となり、更に流れ、最後には大海に入る。そして、その過程の要所は5つ。1つ目は、湧水のように『気』が出る所(=ツボ)、井穴(せいけつ)。2つ目は、小川のように小さな水流となって『気』がしたたる所、榮穴(えいけつ)。3つ目は、浅瀬から深みへと入り込むように『気』が注ぐ所、兪穴(ゆけつ)。4つ目は、通り過ぎる所、経穴(けいけつ)。5つ目は、大海原に入るように『気』が合流して深く内に入る所、合穴(ごうけつ)。これら5つのツボを合わせて五兪穴(ごゆけつ)という。気と血を整える鍼灸治療の際、重要なツボとなる。

赤いラインは『手太陰肺経 て・たいん・はいけい』という経絡。体内では肺にもつながっている。この経絡上にあるツボは11個。その中で、五兪穴に該当するツボを見てみよう!親指の爪の横にあるツボ『少商 しょうしょう』が、井穴。気が出る所。親指の付け根にあるツボ『魚際 ぎょさい』が、榮穴。気がしたたる所。手首にあるツボ『太淵 たいえん』が兪穴。気が注ぐ所。手首の少し上にあるツボ『経渠 けいきょ』が、経穴。気が通り過ぎていく所。肘にあるツボ『尺沢 しゃくたく』が、合穴。気が合流して入り込む所。

 

左腕。手のひら側。黄緑色の矢印が『尺沢』。『尺』は肘のこと。『沢』は『水の集まるところ』という意味。『手太陰肺経』の『気』が大きなまとまりとなって、このツボに入る特徴を『沢』で表現した。『尺沢』は風邪や喘息など呼吸器の症状の治療に用いられる。詳しくは前々回のブログ『特集:五臓六腑と経絡とツボと鍼灸の関係性②~手太陰肺経』を見てね。

 

ちなみに、『尺沢』と同じ高さ、肘にあるツボ『曲沢 きょくたく』と『少海 しょうかい』も別の2本の経絡の『合穴』。『気』が合わさって内部に入り込む作用を持つツボたち。重要なツボが3つ並んでいる!

右腕。手のひら側。『尺沢』(青丸)の両隣りには肘を曲げる筋肉がある。スマートフォンやパソコン・重労働などで指や腕全体を酷使すると、肘を曲げる筋肉がガチガチになり、肘周辺にだるさや痛みが出ることもある。そんな時には『尺沢』の両隣りに鍼やお灸をする。

『尺沢』のツボの取り方を自撮りしたよ。初心者の方でも位置を見つけやすい。興味のある方は動画をご覧ください。ツボの取り方や、ツボ押し、お灸のやり方は、オンラインお灸教室でもレクチャーしてるよ~。福岡市南区にある、女性専門鍼灸&パーソナルトレーニング≪レディース鍼灸ことうプラス≫の鍼灸師・理学療法士のコトーでした。五兪穴の説明は難しかったなぁ~。読んでいただきありがとさんです!