語学と鍼灸の勉強のために、
中国・安徽省(あんきしょう)・無湖市(ぶこし)に
留学していたことがあります。
上海から各駅停車で10時間,
南京から高速バスで1時間の所です。
留学半年後の冬休みに、1人で一時帰国しました。
当時の語学力は少し中国語を話せるが、
ほとんど聞き取れない状態(方言の壁は厚かった!)
留学するときは日本から上海回りで、
日本語の話せる中国人が同行していたので、
何の不安もありませんでした。
2006年12月下旬、
上海の旅行会社に日本語が上手な社員がいると聞き、
そこで南京空港⇔関西国際空港の航空券と
南京のホテルの予約をお願いした。
2007年2月2日、大学前に止まっていたタクシーのドライバーに尋ねた。
南京までいくら?
彼は「250元」と答えた。
長距離の場合、事前に運賃を聞かないとぼったくられてしまう。
その頃、1元=約15円だから約3750円。
まあまあ相場と思い、そのタクシーに乗り込んだ。
今日泊まるホテルの住所や電話番号が書いてある紙を渡すと、
ドライバーはすぐ携帯電話を取り出し、
ホテルに行き方を尋ねているようだった。
南京まであと半分という所でドライバーはタクシーを止め、
近くに停車していたタクシーのほうへ歩いていった。
しばらくして戻ってくると
「自分は道がよくわからないから、ここからタクシーを乗り換えてくれ。
自分に120元,彼に130元支払えばいいから」と言った(と思う)。
ほどなく南京市内に入った所でタクシーが止まり、
ドライバーが別のタクシーのもとへ…。うっ、嫌な予感!!!
しばらくして戻ってくると
「自分はホテルの場所がわからないから、
あのタクシーに乗り換えてくれ」と言った(と思う)。
3人目のドライバーは何度も何度も携帯電話でホテルへ道順を確認していた。
タクシーはどんどん市内を離れ、いつしか田園風景に…。
1時間半かけてやっと着いたのは、さびれた温泉地。
ドライバーもほっとした表情をうかべていた。
翌朝8時発の飛行機に乗るので、
早速フロントで、空港までどれくらいかかるか聞いた。
車で1時間。
えーっ!旅行会社には空港に一番近いホテルをお願いしたのに!!!
しかたないので、翌朝のタクシーを予約した。
その夜生まれて初めて、食あたりでもないのにお腹が下った。
翌朝5時半に、タクシーではなく自家用車に乗り込んだ。
エアコンをつけていないので、底冷えした。
いくら走ってもほとんど民家がない暗黒の世界。
私の語学力では話が続くわけでもなく、
ドライバーは沈黙に耐え切れずにラジオをいれた。
何曲目かでゴスペラーズ(日本のコーラスグループ)の『星屑の街』が流れてきた。
もうすぐ落ちてきそうな大きな大きな満月を眺めながら、
どうぞこの曲が終わりませんように…、
終わりませんように…、
終わりませんように…、ひたすら願っていた。