コトー Blog & Vlog

東洋医学のこと、鍼灸治療のこと、パーソナルトレーニングのこと、日々の暮らしのこと…。カテゴリー別に書き連ねています…。ちょこっと、動画も始めました…。

鼻炎・花粉症・風邪・ぜんそくなど呼吸器の症状の鍼灸治療とツボ療法・後編

体幹の前面。肋骨とその間にある肋骨筋という筋肉を取り除くと、肺、その下に横隔膜(おうかくまく)がある。

 

肺は自分では動かせない。横隔膜が主体となり、空気を吸い込んだ時に肺を膨らませ、

 

吐く時に肺をしぼませる。横隔膜は心臓の筋肉と同じように、年中無休で動いてもへっちゃらな筋肉。疲れることがない。

全速力で走った後、息が切れて、肩を上下に動かして呼吸を整えようとする。これは、肩を引き上げる筋肉も使って、肺をもーっと広げて空気を取り込もうとするから。

努力して呼吸をする時には、『呼吸補助筋』が参加する。努力して空気を吸う時に補助する筋肉は、10個以上!努力して空気を吐く時に補助する筋肉は、10個近く!長期に渡り、呼吸困難(息切れ)・咳・痰・ぜんそくなど、肺の症状が続くと、これらの呼吸補助筋のサポートも長期に渡る。

 

こちらは背中のイラスト。オレンジ色は、僧帽筋(そうぼうきん)の上部繊維。後頭部の頭蓋骨と、うなじの靭帯(じんたい)から始まり、鎖骨に付く。青色は、肩甲挙筋(けんこうきょきん)。首の骨に始まり、肩甲骨の内側に付く。両者とも肩を引き上げる筋肉。

2つの筋肉は、努力して空気を吸う時に呼吸補助筋となり、呼吸をサポートする。本来の仕事は肩を引き上げることで、横隔膜のように年中無休には設計されていない。休まずに働けば、筋疲労を起こす。そうなると、呼吸のサポートがしづらくなる上に、首こりや肩こりにも悩まされるようになる。

ガチガチに硬くなった呼吸補助筋を鍼やお灸でほぐすと、呼吸のサポートが復活し、呼吸や咳、痰出しなどが楽になる。呼吸補助筋は首・肩・体幹前後面と広範囲にあり、これらの部位の筋肉痛も改善する。

調子がいい時には、呼吸補助筋のストレッチングもおすすめ。緊張気味の筋肉がゆるみ、呼吸が楽になる。

当鍼灸院ではパーソナルトレーニングも実施している。鍼灸師コトーの前職は理学療法士。呼吸リハビリテーションも行ってきた。その経験を活かし、鍼灸治療やセルフお灸の指導だけでなく、呼吸補助筋のストレッチングやリラクゼーションの方法も指導しているよ~。

5年前に特集ブログを組んだ。17年前に肺の病気になり、徐々に呼吸機能が低下し、日常生活に支障をきたしていた方の鍼灸治療がきっかけだった。興味のある方は『特集~呼吸器疾患に伴う呼吸困難への鍼灸アプローチ①』から読んでみて。4話ある。呼吸のメカニズムももっと詳しく書いているよ。

鍼灸治療のアプローチは鍼灸師によって異なる。呼吸器の症状で鍼灸治療を受けられる方は、担当鍼灸師に相談してくださいね。

 

いたる所でアジサイを見かけるようになった。

 

もうすぐ全部の花が開くねぇ。

 

エレガントだねぇ。

 

おーっ、一歩先ゆくアジサイ。

福岡県福岡市にある女性専門鍼灸&パーソナルトレーニング≪レディース鍼灸ことうプラス≫の女性鍼灸師・理学療法士のコトーでした。

鼻炎・花粉症・風邪・ぜんそくなど呼吸器の症状の鍼灸治療とツボ療法・前編

赤いラインは、『足太陽膀胱経 あし・たいよう・ぼうこうけい』という経絡。首の付け根から2本に分かれ、お尻までは2本が並行に走る。上半身をアップすると…。

 

首の付け根にあるツボ『天柱 てんちゅう』(黄色丸)から、内側のライン(赤丸)と外側のライン(緑丸)に分かれる。

 

赤丸の4個のツボたち。上から、『大杼 だいじょ』『風門 ふうもん』『肺兪 はいゆ』『厥陰兪 けついんゆ』。これらは、鼻炎・花粉症・風邪の症状(鼻水・鼻づまり・咳・痰など)や、ぜんそくなど、呼吸器の症状を和らげるツボ。

 

鍼を置いてその隣に台座灸をしたり…。

 

鍼が苦手な方は台座灸だけをしたり…。

 

棒灸をしたり…。お灸の煙で咳が誘発される方は鍼だけをする。その方の症状に合わせて鍼とお灸を使い分ける。

晩秋や冬に、風邪のひき始めで背中がゾクゾクする時は、これらのツボのある『両方の肩甲骨の間』に、小さな貼るホッカイロを服の上から縦長に貼ると、体に風邪の邪気が入り込む前に退散するよ~ん。

背中にあるツボに対して、自分ではアプローチしにくい。そこで登場するのが…。

 

『手太陰肺経 て・たいん・はいけい』という経絡。この上に11個のツボがのっている。この経絡は体内では肺にもつながり、11個のツボは呼吸器の症状を治すときに用いられる。位置が見つけやすいツボ、かつ、重要なツボは3個。

手首にあるツボ『太淵 たいえん』。ここなら自分でお灸やツボ押しができる。詳しくはブログ、【動画で見る!ツボの取り方】咳・痰・のどの痛み・手首の痛みに働きかけるツボ『太淵』、を見てね~。

肘にあるツボ『尺沢 しゃくたく』。ここも自分でお灸やツボ押しができる。詳しくは、ブログ、【動画で見る!ツボの取り方】風邪やぜんそくなど呼吸器の症状や肘の痛みに働きかけるツボ『尺沢』、を見てちょー。

鎖骨の下にあるツボ『中府 ちゅうふ』。咳や痰、ぜんそくなど肺の症状がある時には、このツボに反応(=圧痛など)が現れやすい。台座灸やツボ押しが気持ちいい。この辺りの皮膚はデリケートなので、お灸をする時は火傷に気を付けてね。詳しくはブログ、【動画で見る!ツボの取り方】風邪やぜんそくなど呼吸器の症状や首こり・肩こりに働きかけるツボ『中府』を見てね。

 

鼻詰まりや鼻炎など鼻のトラブルには、『迎香 げいこう』。小鼻の横にある。顔にあるのでお灸はせず、ここにちょこん!と鍼を置く。ツボ押しもおすすめ。詳しくはブログ、【動画で見る!ツボの取り方】鼻づまりや鼻炎に働きかけるツボ『迎香』、を見てちょー。

このように、鼻や肺にかかわるツボはたくさんあり、それらを使った鍼やお灸で、呼吸器の症状をやわらげる。

次回は、『呼吸にかかわる筋肉』の筋疲労を鍼灸治療でほぐして、肺の症状を和らげる取り組みを紹介するよーん。福岡県福岡市にある、女性専門鍼灸&パーソナルトレーニング≪レディース鍼灸ことうプラス≫の女性鍼灸師・理学療法士のコトーでした。

【動画で見る!ツボの取り方】呼吸器の症状や首こり・肩こりに働きかけるツボ『中府 ちゅうふ』

赤いラインは、『手太陰肺経 て・たいん・はいけい』という経絡。体内では肺にもつながっている。イラストには描かれていないが、左にも対称的に『手太陰肺経』はある。鎖骨の外側の下にある『中府 ちゅうふ』というツボに始まり、腕の内側を通り、親指にあるツボ『少商 しょうしょう』で終わる。この経絡にはツボが11個。左右合わせて22個。

呼吸器(=肺)が不調な時は、この経絡を流れる気(=エネルギー)と血(けつ)(=栄養)が滞ったり不足している。そして、経絡上のツボにも反応が現れる。あるツボを押すと、他のツボよりも圧痛が強かったり、皮膚がへこんだり、ざらついたり…。11個のツボのうち、反応が出やすいのが『中府』。『中府』に鍼やお灸をして、風邪や喘息など呼吸器の症状を緩和させる。

大胸筋(だいきょうきん)(オレンジ色)は胸にあり、手作業をする時に働く筋肉。パソコンやスマートフォンなど手作業をしすぎた時には、首や肩だけでなく、この筋肉も凝る。大胸筋の上に『中府』(青丸)があるので、首こりや肩こりの鍼灸治療でも、『中府』に鍼やお灸をして、大胸筋のコリをほぐす。

さて、『中府』という名前の由来の話。『中』は『中焦(ちゅうしょう)の気(=エネルギー)』のこと。『府』は『経絡の気が集結する所』という意味。中焦の気が最初に集まる所なので、『中府』と名付けられた。

東洋医学では体幹の機能を3分割している。横隔膜(紫色)よりも上の胸部を『上焦 じょうしょう』といい、心や肺が含まれる。横隔膜より下でヘソよりも上を『中焦』といい、脾や胃などが含まれる。ヘソよりも下を『下焦 げしょう』といい、小腸・大腸・腎・膀胱などが含まれる。ここで、「あれ?」と疑問に思った方がいるのでは?肺は上焦にあるから『上府』と命名されるべき?

黄色のラインは体内を巡る『手太陰肺経』。中焦から始まり、下って大腸へ。そこから、胃に上り、横隔膜を貫いて肺へ。そして、気管に上り、左右に分かれて脇の下へ向かい、ツボ『中府』で体表に出る。『中府』から、体表の『手太陰肺経』がスタートする。『手太陰肺経』は中焦から始まるので、『上府』ではなく、『中府』という名前がついた。う~~~ん、東洋医学は奥が深い。

『中府』の上に『雲門 うんもん』というツボがある。『雲門』のツボの位置を確認しないと、『中府』のツボを取れない。『中府』のツボ取り方法を動画にしてみたが、説明が難しく、10回ほど撮り直した。苦心の作を見てほしいなぁ~。

次回は特集ブログに戻ります。『大腸』にもつながっている『手陽明大腸経絡 て・ようめい・だいちょうけい』の話となります。よろしくです!福岡市南区にある女性専門鍼灸&パーソナルトレーニング≪レディース鍼灸ことうプラス≫の女性鍼灸師・理学療法士のコトーでした。

 

特集:五臓六腑と経絡とツボと鍼灸の関係性②~手太陰肺経

体と心の不調は、気(=エネルギー)と血(けつ)(=栄養)が滞った状態。気と血を全身に巡らすのは経絡(けいらく)。気と血のめぐりが悪いと、経絡上のツボに反応が現れる。そのツボに鍼やお灸をして、気と血の巡りを促し、体と心の不調を整える。今回は『肺』の症状と、それらにかかわる経絡とツボについて書いてみようと思う。難しそうだなぁ…。頑張るぞ!

肺は呼吸をつかさどる。肺が不調になると、咳・痰・息切れ・喘息など呼吸器の症状が現れる。また、肺は鼻やのどと関係し、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・声がれ・のどの痛みなどの症状も現れる。

東洋医学からみた『肺』は他の働きもある。

肺を膨らませて空気を吸うときに、『天空の気』というエネルギーを吸い込む。私たちは、口から取り込む飲食物から『後天の精 こうてんのせい』というエネルギーを作り出す。『天空の気』と『後天の精』は合わさり、生命活動を維持するためのエネルギーとなる。肺が不調になると『天空の気』を十分には吸い込めず、エネルギー不足で疲れやすくなる。

肺は全身に水分を巡らす働きもある。肺が不調になると水分が全身を巡りにくくなり、むくみが生じたり、汗が出にくくなる。また、肺は皮毛(ひもう)(=皮膚とうぶ毛)をつかさどる。肺の不調で皮膚が乾燥すると、皮膚のかゆみ・アトピー性皮膚炎・口の渇きなどの症状が現れることもある。

肺は外邪の侵入を防ぐバリアを体表に巡らせ、免疫機能を高めている。肺が不調になるとバリアが弱まり、風邪をひきやすくなったり、花粉症が出ることもある。

五臓六腑は感情と結びつきがある。強い『悲しみや憂い』は肺にダメージを与え、肺の症状が出ることもある。

赤いラインは『手太陰肺経 て・たいん・はいけい』という経絡。肩の付け根にあるツボ『中府 ちゅうふ』から始まり、腕の前面を下降し、手の親指にあるツボ『少商 しょうしょう』で終わる。この経絡は体の深部で肺にもつながる。経絡の中を流れる気と血は、体表だけでなく肺にも届く。

『手太陰肺経』の上に、ツボは11個ある。経絡は左右対称にあり、ツボは合わせて22個。肺の不調は、この経絡を流れる気と血が滞った状態。そして、経絡上のツボに反応が現れる。具体的には、押すと他のツボよりも痛みが強い、ツボ周辺の皮膚がざらつく、へこむ、などなど。反応があるツボに鍼やお灸をして、経絡を流れる気と血の量や勢いを調整し、肺の不調を改善する。

反応が現れているツボだけで治療を進めていくわけではない。『風邪をひいて咳や痰・のどの痛みがある、肺がダメージを受けている』とすると、肺にもつながっている『手太陰肺経』の上にあるツボを使って、症状を改善させる。ツボは1つ1つ特徴がある。咳・痰・のどの痛みを鎮める作用をもつツボ『太淵 たいえん』を使おうか、『尺沢 しゃくたく』がいいかな…。諸々の症状に合うツボを選ぶ。

この経絡は体表では腕を通っているので、腕コリ、指コリ、肩コリ、首コリの治療にも、この経絡上のツボを使う。コトーがよく使うツボは『中府 ちゅうふ』。

 

大胸筋(だいきょうきん)という筋肉は胸にあり、手作業をするときに働き、コリやすい。その大胸筋の上に『中府』がある。

今回のブログで紹介した『太淵』『尺沢』『中府』のツボ取り動画を自撮りしたよ。『中府』はツボの取り方がややこしく、10回ほど撮り直した。専門的なことを分かりやすく伝えるのは、動画もブログも難しい。3本の動画はブログとYou Tube チャンネル≪レディース鍼灸ことうプラス≫に載せるよ~ん。

特集ブログは始まったばかり。よろしくです!福岡市南区にある、女性専門鍼灸&パーソナルトレーニング≪レディース鍼灸ことうプラス≫の鍼灸師・理学療法士のコトーでした。

特集~慢性呼吸器疾患に伴う呼吸困難への鍼灸アプローチ④

今回の特集ブログで登場していただいたTさん。

呼吸器疾患をわずらって17年。

慢性の首こり・肩こり・頭痛に困って、昨年12月に当鍼灸院に来られた。

 

 

呼吸をするとき、胸郭の動きが乏しく、呼吸は浅い。

左肺を3分の1摘出し、左胸郭の動きはほとんどない。

声も小さい。

長年の息苦しさや咳込み、痰などが原因で、

呼吸補助筋の筋疲労が著しく、

慢性的な首こり・肩こりと、それに伴う頭痛におちいっていた。

呼吸が楽にならないと、それらは根本的には改善しない。

 

 

カチコチになっている呼吸補助筋を鍼治療でゆるめた。

肺に炎症を起こしていたので、煙が出る灸治療は行っていない。

初回から呼吸が楽になった!と実感された。

 

 

5日に1回のペースで治療。

呼吸補助筋に柔軟性が出て、

呼吸時の胸郭全体の動きが拡大し、

左胸郭の動きも出てきた。

開始当初よりも呼吸が深くなり、

呼吸の楽さが持続するようになった。

 

 

今まで、3回ほど咳込まないと痰が出せなかったが、

1回の咳で痰が出せるようになった。

呼吸補助筋の筋疲労を起こしにくくなり、

首こり・肩こり・背中こりが軽減した。

咳込みに伴う頭痛もなくなった。

インターフォン越しの声も聞き取りやすい。

「主人にもうるさいって言われた」と、

嬉しそうに話すTさんが印象的だった。

 

 

私の前職は理学療法士。

20年間、呼吸リハビリテーション(呼吸筋のリラクセーション、

胸郭運動、排痰など)に携わってきた。

その頃、『呼吸改善に鍼治療』という概念は私にはなかった。

昨年、Tさんと出会い、

『鍼治療で呼吸困難にアプローチする』という貴重な機会を得た。

鍼灸にはいろいろな可能性があり、

多角的な視点でアプローチすることの大切さを痛感した。

 

 

もちろん、鍼治療が適応できない呼吸器疾患があるかもしれない。

全身状態と呼吸機能を事前に評価し、

鍼治療ができるかどうかの判断が必須である。

また、慢性の呼吸器疾患の方は、痩せて胸板が薄く、

呼吸補助筋の筋委縮や硬直を起こしていることも多い。

鍼治療には経験が必要だと思う。

 

 

今回の特集ブログでは、Tさんに全面的に協力していただいた。

深く感謝いたします。

これからもTさんとともに呼吸器疾患と戦います!

Tさんに鍼治療の感想を聞いてみました。

ぜひ、『患者様の声』のページもご覧ください。

 


空気が冷たいと気管が縮こまり、

呼吸器疾患の方は息がしにくいこともある。

梅がほころび始めた。

春近し…。