コトーは家でほとんど本を読まないくせに、
本屋に行くと2,3時間あっという間に過ぎちゃう。
本屋を隅々まで歩き回り、
タイトルが気になった本をパラパラめくる。
ジャンルは問わない。
おっ! 大ファンの作家の新刊発見!
かがくい ひろし氏の『うめじいのたんじょうび』。
かがくい氏の新作は、お目にかかれないと思っていただけに、
その場で一気に読む。
相も変わらず絵も内容も優しさに包まれつつ、
クスッと笑っちゃうし、ワクワクする。
かがくい氏は2005年に50歳で絵本作家デビュー。
それまでは特別支援学校で教鞭をとり、
紙の造形や人形劇を生徒に披露していた。
コトーは鍼灸師になる前は理学療法士として、
運動麻痺のある子供たちの運動療法をしていた。
ときには子どもたちが通う特別支援学校にも出向いていた。
運動麻痺のために市販のおもちゃでは遊べない子供たちもいた。
遊ぶ楽しさを知ってほしい…。
運動麻痺があっても遊べるおもちゃをたくさん作った。
かがくい氏は在職中どんな思いで創作していたのかな…。
思いをはせた…。
かがくい氏がデビューして4年後に病気で亡くなっていたことを知り、
絵本を手元に置きたくなった。
大人買い…。
その中の1冊、『みみかきめいじん』。
耳かき名人のひょ・うーたん先生と弟子のひょうすけの話。
先生に耳かきをしてもらったら、
象はあまりの気持ちよさに溶けちゃった…。
鍼治療をしているとき、コトーはいろいろ思いをめぐらせる。
鍼を効かせるには、どれくらいの長さ・太さの鍼がいいかな…。
斜めに刺したほうがいいかな…。
刺した鍼をここでとめたほうがいいかな…、
もうちょっと奥まで刺したほうがいいかな…。
鍼を刺したときの手ごたえだけで、
見えないツボの中を察知する。
「う~~~、そこそこそこ」
「気持ちい~い」
そんな言葉を聞くと、コトーは耳かきをしている気分になる。
かゆい所に耳かきをとどかせる、耳かき名人『ひょ・うーたん先生』のように、
自由自在に鍼をあつかえる鍼灸師になりたい…と、
この絵本を読むたびに思う。